阿曽原温泉小屋山歩

黒薙温泉旅館に山行の前乗りで前泊した翌日の話。10月03日(土)~04日(日)のこと。

福井に住む山仲間から、「阿曽原温泉小屋で、温泉入ってキャンプなんていかが?」との連絡が入る。実は今季、大好きで3回も読んでいる吉村昭さんの高熱隧道の世界を肌で感じたくて、下ノ廊下を歩きたかったんである。
それで本来ならば是非とも山仲間スロトレさんの歩いた裏剱&下ノ廊下のぐるりっぷコースか、定番の黒部ダムから欅平までの下ノ廊下コースを歩いてみたかったんだけれども、今季は雪が多く、雪解けが思うように進まず、黒部ダムからの通り抜けはできないとのことなんで、この夢のような山行は今年は見送りかなと思っていたところにこのキャンプのお誘い。
長~~~い道のりを歩いたあとのビールの美味しさたるや、まるで涙が出そうだった。そんなくたくたになった、下ノ廊下の水平歩道を歩いてきた記録です。

 

3日の土曜。黒薙温泉旅館での朝食を6:45分に早めてもらい、黒薙駅7:56分発のトロッコ電車に乗って欅平駅へ向かった。駅に着くと、福井の山仲間(kojiさん & mieさん)が待っていた。挨拶もそこそこに、いきなり阿曽原温泉小屋へ向かって歩き始める。福井の二人はもう水平歩道は2回目なので歩くピッチも速く慣れたもん。
こっちは差し掛かる崖や絶壁のたんびに「おお!これ?これが例のコの字のアレかい?」だなんて素っ頓狂な質問ばかりするものだから、半ば少々ベテランの二人は呆れていたようだ。~_~;

 

登山道は、水平歩道に入るまでの急登(しじみ坂)の40分がとても辛かった。キャンプ道具の詰まったデカザックが肩に腰に重くのしかかり、軽く悲鳴をあげていた。ところが今度はこの水平歩道歩きが辛くなる。最初の頃はあまりの幅の狭さにわーわーきゃーきゃーおっかなびっくり慎重に歩いていましたが、基本的に登山道は高くておっかない場所にあるだけで平坦で単調。恐怖心も時間と共にだんだんと和らいでくるんです。
とは云え一歩間違えると谷底へ真っ逆さまに落ちてしまうロケーションであるために、番線(太い針金)をつかむ手は離せません。したがって足の裏と手のひらがじわりじわりと疲れてくるんです。
蜆谷(しじみたに)のトンネル、志合谷(しあいたに)のカーブのついた150mものトンネルをパスすると、いよいよ水平歩道の核心部である岩壁をコの字にくり抜いた大太鼓(おおだいこ)に差し掛かる。その道幅およそ80cmほど。真下をみればケツの穴がキュッとしまるほどの高度感。まるで谷あいに飲み込まれそうであった。

 

下ノ廊下とは黒部川の谷あいのことを云い、その下ノ廊下の中で標高1000m付近の部分、欅平から仙人谷までの間を水平歩道と云う。この歩道は仙人谷ダムと黒部第三ダムを建設するための建築資材搬送のためのものであり、下ノ廊下の断崖絶壁をくり抜いてつくった人工的な歩道なのです。仮設も運搬も超達人のなせる技。すごすぎてぐうの音も出ません。

 

さて、木々のすき間から阿曽原温泉小屋がチラリと見えるところまで歩いて来たら、残り30分はひたすら温泉に入ってビールを呑むことだけを考えて歩いた。テン場はmieさんの読み通りずいぶんと空いていてタイミング的に良かったようだ。
これがもしも黒部ダムからの通り抜けがOKだったならば、こんなに空いたテン場ではなかったとのことだった。もちろんその場合、温泉の浴槽は肌色で芋洗い状態だったことが予想される。(´ε`;)

 

最終的には12人ほど浴槽にダイブしてきたが、今回はこんな写真が撮れるほど空いていた。汗びっしょりで長~い道のりを歩いたあとの温泉は本当にE気持ち。浴槽の中で話してくれた先輩連中の山談義もE話ばかりだった。

 

陽が暮れて、夜。各々が温泉でぽかぽかになっているもので外は全く寒くなく、心ゆくまで晩餐会。袋めしを主体とした今回のボクらの山めしは、ややわびしくて華がない。それを見かねた福井チームからは焼き鳥のおすそわけを頂く。丸鍋まで持ってくるだなんて、何処まで食に対してどん欲なんだろか。見習わねばな。

 

そして翌日、朝。5時、雨・・・。晴れのはずなのに―なんて思いながら出立のための準備をし、朝めしのパンと珈琲をそそくさと取る。GPSで取った昨日のログを確認すると、14kmは歩いている。どおりで疲れている訳だと納得し帰り道に備えた。阿曽原温泉小屋が見えたところまでまた登り返すと、今度は暑いほどの日射しが差し込んできた。調子が戻り、また水平歩道を歩く。
でも帰りは番線をつかむ手が利き手ではないのでさらに慎重になって歩いた。帰り道では少しばかり黒部峡谷の景観をじっくりと見る余裕が生まれていたので、途中、下ノ廊下が綺麗に見えるところでしばし時間を忘れて景色を楽しんだ。無事に欅平に戻って来られて何よりだった。

 

夢に見た水平歩道の山歩き。今回は欅平から阿曽原温泉小屋までのピストンだったけれど、温泉とキャンプが目的だからいつもの山歩きとはまた違った楽しみ方ができました。前述した下ノ廊下のコースはいつか歩きにゆけることをまた夢見て、それまでにもっと経験値を増やしたいと思っている。同行してくれた福井の二人に大感謝♪(°∀°)

 

阿曽原温泉小屋山歩シャシン記ログ
※:動画01 / 動画02

 

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