北軽井沢スウィートグラスの満天星屑キャビンにて

2010年4月23日に北軽井沢スウィートグラスでは、新しい施設「満天星屑キャビン」がオープンする。

それに先立ってモニター役として抜擢された僕は、先週の土日にキャンプ仲間を引き連れてこの施設を体験してきた。満天星屑キャビンの特徴、利点、注意点などのレビューをしなければならないので、結構責任重大なのだ。
関東甲信越エリアでは41年ぶりに4月に大雪が降った。雪による悪路や交通事情に注意して出かけた僕らは、かなり早めにキャンプ場へ到着した。

 


少し早めにチェックイン。雪化粧された綺麗な浅間山が出迎えてくれる。噴煙も目視できるほど青空が澄み渡っていた。
モニター開始の初仕事は屋根の上の雪下ろしとキャビン廻りの雪かきから始まった。スウィートグラスのスタッフも総動員してくれ、大いに助かった。
建物の全体像を観察すると、北欧ふうなデザインが見てとれる。クリーム色に塗装された板張りの外壁は、自然へ優しく調和してくれるようであった。なによりも、空のブルーとクリーム色のコントラストが美しい。

 


屋根の雪下ろしと雪かきが終わり、やっと「満天星屑キャビン」が使える状態になったので、西側に広がる大きなテラスから入口へアプローチする。両側で約2.8mもあるこれまた大きな引き分け戸を戸袋に納め、キャビン内へ荷物を搬入した。入口開口の間口が広いから、クーラーボックス等、大きな物の搬入がしやすい。

ジャバラ式の左右に開く2箇所の屋根も含め、開閉できる開口部の全てを開け放ってこの空間を見渡すと、かなりすごい。十二分なほどの開放感が楽しめる。陽の光、新鮮な空気、鳥のさえずりや木立が揺れ動く音など、自然の中で感じられることが室内で楽しめるのだ。
まさに、外を中に持ち込むと云うこの施設のコンセプト通り、満天星屑キャビンは稼働してゆきそうである。透過性のある部分にはガラスではなくアクリルが使われているので安全性も考慮されている。
部屋の中央にどかんと鎮座しているのが囲炉裏風の焚き火台。BBQグリルのあるファイヤーピットが正式名称かな。1.2m角もの大きさがあり、食卓として使える奥行きは四方に各々270mmあるから、食器類や調理器具も問題なく配置できるように配慮されている。

 


食材置き場にしたキャスター付テーブル(1075mm×600mm)と排水設備のみのシンク付テーブル(1465mm×600mm)などのキッチンテーブルは、大きすぎず小さすぎず充分な大きさであった。高さは何れも750mmで、これも高すぎず低すぎず使用勝手が良かった。テーブル下の床には持参した調理器具類をおけば歩行の邪魔にならないし、デッドスペースも有効的に活用できる。
このキャビンの定員は5名となっている。2m×1.4mのダブルベッドサイズのスペースが部屋の両端にあり、寝袋2つを敷くには丁度良い大きさだ。このスペースにはウレタンのマットレスも敷き詰められているから快適な寝心地を得ることができる。さらに両端の間にはベンチにもベッドにもなるスペースがあるから、5人目の寝床もちゃんと確保されている。高さは何れも420mmとなっており、一般的な椅子の高さになっているので腰掛けやすいのだ。
そして、囲炉裏風ファイヤーピットに火を入れ、昼食の準備にとりかかる。

 


入口の引き分け戸を開け放つと浅間山が見える。

浅間山をチラチラ見ながら昼食を開始する。まずは具沢山のトマトスープを仕込む。汁物は昼、夜、朝といただくから、たっぷりと作り、焚き火のそばでコトコト煮込む。メンバー全員貝大好きなもので、生牡蠣と焼き牡蠣、それからホッキ貝の刺身とバター焼きをつまみにする。昼の部のメインはジンギスカンだ。もやしは1人一袋ぺろりとたいらげた。〆にうどんを入れて、ごちそうさま。

 


焚き火の煙が目にしみ始め、炭に変えて暖をとり、とりあえず乾杯をする。黄色い照明の光や炭からの火のおかげで暖かそうに見えるが、実は白い息が出るほど、ものすごく寒い。開放的に外の景色を楽しむか、扉を閉め切って囲炉裏の廻りでくつろぐか、メンバーの中で意見が分かれるところであった。結果的には、寒い暖かい寒い暖かいを繰り返した。1人、寝袋でお休み中。

 


ちびちびやりながら、だらだらと夕食を開始する。
軽井沢デリカテッセンのハム、ソーセージ数種、またしても焼き牡蠣、チーズフォンデュなど、簡単なつまみを用意しつつ、


夜の部メインのパエリア、手羽先&ソーセージのスモーク、野菜のオリーブオイル焼きも時間差で出来上がるように火にかける。こんなとき、囲炉裏風ファイヤーピットの大きさが物を言う。この上で多目的に何でもできる。ただ、囲炉裏部分の五徳が640角とサイズが大きいから、近火や遠火用に上下の位置を変える(ひっくりかえす)のが大変だった。

 


西側のテラス方向に陽が沈み、一番星が輝き始め、その上に月がでる。

いよいよ部屋の明かりをすべて消して、寝ころび、星屑観賞だ。なんといってもこの施設の名前は満天星屑キャビンなのだ。寝袋にくるまり、テントルーフを開け放すと数え切れない星屑たちが現れた。今にもこぼれ落ちてきそう。しかし僕のカメラの腕が悪く、満天だった星の撮影ができなかった。くやしい。10分間の星の軌跡だけちょっと写ってる。
この星空はひょっとしたら子供よりも大人の方が大喜びするかもしれない。

 


満天星屑キャビンは贅沢な開放感がうりだと思う。

開閉できる開口部以外にも沢山のサッシがあり外部とのつながりが遮断されない。部屋にはカーテンが付いていたが、このキャビンには不必要ではないかなと思った。椅子か造り付けのベンチに座れば外部からの視線は遮られるのでそれほど神経質になる必要もないし、見られて減るものでもない。
キャビン内部には柱付けのブラケット照明が2ヶ所あり、外部にはテラス用の照明器具が1つ付いている。内部は既存の照明だけでは少し暗く感じたので、僕らはランタンを2つ持参して活用した。

もう少し暖かい季節であれば、引き分け戸を開けてテラスとの一体感を楽しむのも悪くない。皆でテラスに寝そべって星空を眺めていても、この施設はなんだか絵になるな。それから、テラスに囲炉裏風ファイヤーピットを持ってきて、床へじかに座って肴をつくりながらちびちびやるのも悪くない。

 


誰よりも早く寝た僕は、誰よりも早く起きてしまった。目が覚めると4:30だった。相当寒い。まだ薄暗いスウィートグラス内をカメラ片手に散歩していたら、この真っ赤に朝焼けしている浅間山に目を奪われた。もちろん満天星屑キャビンからも見ることができる、起きてれば。
そして東の空に目をやると、陽が昇ってきたのだ。5:30ぐらいだったかな。僕だけでこの景色を独り占めするのは勿体ないから、屋根を全開にしてみんなを起こした。寝袋からは出てこなかったが、窓から見えるこの景色を皆楽しんだ様子だった。

 


早起きして腹ペコのため、早めに朝食を開始させた。ついでに部屋の備品も試す。
生豆を煎る行為もそれに費やす時間もこういう場所ならではの贅沢だ。5分位で茶色く色づき、初めてにしてはムラ無く綺麗に焙煎できたかな。しかしここまでは良かったが、豆を細かく挽きすぎたようでペーパーフィルター不要のドリッパーは少々目詰まり気味になってしまった。もう少し荒く挽けば良かった。(ペーパーフィルター用の豆の挽き加減で良さそう)なかなかドリップしてくれなくて、えぐいエスプレッソになってしまった。
ホットサンドマシーンは10cm×10cmくらいだったか?(測っておけば良かった)スーパーで市販されている食パン8枚切りを大きさに合わせて切り、切れ端を真ん中に挟み込み、上手い具合に無駄なくできた。パン・ハムチーズ・パンの切れ端・ハムチーズ・パンとビッグマック状に重ねるとパンの厚みもぴったりになる。
昨夜の残りのパエリアを焼きおにぎりに、残りのスモークソーセージを軽く炙り、あとはトマトスープでごちそうさま。

食後のおやつ用にポップコーンマシーンをいじってみる。これ、楽しい!簡単でほぼ失敗無しの優れモノだと感じた。欲しいかも。バターや油、味付けはしっかりたっぷり目がオススメだ。使用後のこびりつきもなくメンテナンスも楽ちんだ。これ大事。

 


部屋をかたづけ、引き戸を閉め、鍵をかけてこれで今回のモニターが無事に終わった。清掃も荷物の搬出も入口の開口が大きいからスムーズに行うことができた。

満天星屑キャビン、ものすごく面白かったしとても楽しめました。
「外を中に持ち込む」と云うコンセプトが矢張り面白いのだ。もしこれが、「中が外のようになる」と云うコンセプトであれば、意味は近いが内容が異なってくる。
室内空間としての完成度が求められ、かなり大変なことになりうる。
隙間風の完全防止やサッシ等開口部の気密性に断熱性能の向上に、囲炉裏風ファイヤーピットの安全面などと、細かいことに関していくつか問題が生じていたかもしれない。だがこの施設はあくまでも「外を中に持ち込む」と云う考えなのだから、あんまり五月蠅いことを云っちゃいけないのだと思う。
機能的で快適に過ごせるログキャビンとは性質が異なり、キャビンの中から夕陽がみられて星空も朝日も浅間山も見ることができる眺望優先的観測所というか、そんな類の、遊び心と趣味性が溢れる施設なのだから。

いや~しかし、キャンプ場のこんな夢のある施設、いつか僕も機会があったら設計してみたいものだな。絶対に面白いでしょこれは。
最後に五月蠅いことを云っちゃいけない内容にも少しだけ触れておこうと思います。
開放的ゆえに焚き火をすると少々の風でもキャビン内が灰だらけになってしまう事。換気扇の性能とレンジフードの役目があまり機能しておらず煙の排気効率が悪い事。集中豪雨や多雪時期の屋根の性能が不安な事ぐらいかな。かといって、もしもこの施設の魅力的な部分を犠牲にして改善されたとしたら、寂しい気もする。勝手なことばかり言って申し訳ない。

新しい施設で遊んで食って泊まって楽しめるモニター役に採用してくれたスウィートグラスさんには本当に感謝の言葉も無い。帰りに、雪下ろし等でお世話になったスタッフへの挨拶すら忘れてしまった始末だ。この場を借りて、感謝表明です。ありがとうございました。楽しかった。

※ちなみに満天星屑キャビンは利用勝手向上のために改修工事がおこなわれました。
新しい満天星屑キャビンのレビューは「こちら」です。よろしかったらどうぞ!

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