
いくつかのイグルーづくりの自主練を経て、今度こそ「イグルー泊」を実践すべく、イグルーの先輩山仲間たちとともに、猛吹雪の『上州武尊山』で揉まれてきた。
2月28日㊏から3月1日㊐のこと。

意気込んで臨んだ今回のイグルー泊であったが、結果として5人の隊のうち、隊長ひとりを山中に残し、4人は下山。
待望のイグルー泊は叶わなかった。

ブログは記録簿でもあるから、そうなった経緯も含め、ここに残しておこう。

武尊山のイグルー適地へは、川場スキー場7階登山窓口前に皆で集合し、全員で諸手続を行ってから行くことになった。
8時30分ごろのことであった。

川場スキー場からの登山はルールが徹底しており、ココヘリの携行が必須。未所持者はレンタルとなる。
登山届提出と同時に往復リフト券も購入する仕組みで、我々はココヘリレンタルを含め二人分で7700円。さらに駐車場代1500円。なかなか出費のかさむ雪山山行である。

それだけ元手がかかれば、何としてもイグルー泊を実現させたい。
ザックの中には酒とつまみも忍ばせてある。山中で消費する気満々だった。

9時ごろリフト乗車。
ザックが重すぎて、仲間のリフトが妙に傾いていたのが可笑しい。

ところが、リフトトップに着く頃には天候は急変。
予報どおりの暴風雪となっていた。

気温は高めで、雪というよりはみぞれ混じりの雨。
厄介なのは20m/sを超える風だった。

9時40分、アイゼンを効かせながら急登へ取り付く。
コンディションは初手から最悪。しかも昨年来ている仲間いわく、明らかに雪が少ないという。

でもゾンデ棒で確認すると積雪は約2m。
適地を定め、10時30分ごろイグルーづくりを開始した。

経験値とは恐ろしいもので、先輩たちの作業は実に早い。

宴会用イグルーを築き、風を避ける曲がったアプローチを作り、さらには快適な荷物置場イグルーまで完成させていく。頼もしさこの上ない。

一方、私のイグルーは完成こそしたものの精度はいまひとつ。
原因は明白だった。
登山靴の浸水。オーバーウェアの防水機能の崩壊。
暴風雨によって全身ずぶ濡れとなってしまったのである。

手袋も靴下もタイツもインナーもすべて濡れた。
そんな状態では作業効率が極端に落ちる。
二人用に内部を拡張し続けること約3時間。

屋根さえ閉じれば風雨は防げる。
しかし一度濡れきったウェアは、もう乾かない。
15時30分の最終リフトを念頭に、14時までに「泊まるか撤退か」を判断することになった。

私はすでに答えを出していた。
この状態での宿泊は無理だと。

イグルーは優れたビバーク手段だと思う。
だがアンダーウェアまで濡れた状況下で一夜を越える技量は、まだ我々にはない。

低体温症の危険は現実的だった。

悔しいが撤退。
……屈強な隊長ひとりを山中に残して。

結果的に無事だったから言えることだが、どれほど経験豊富な仲間であっても、やっぱりこのような状況では全員で下山する判断が望ましかった。
大きな学びを得た山行となった。

さて下山した4人は、道の駅 川場田園プラザへ移動し車中泊。

まずは「楽楽の湯」で冷え切った身体を解凍することにした。実に良いお湯だった。

その頃、山中の隊長は熱燗で暖を取っていたらしい。

我々は道の駅の「地ビールレストラン武尊」へ。
朝から飲まず食わずだった空腹と渇きを満たすべく、地ビールをピッチャーで注文し乾杯。

一方その頃、隊長は5人分の食材消費に忙しい。

こちらは定食を豪快に平らげる。

向こうは天然キノコうどんを肴に出汁割り熱燗。

そんなことして過ごしている姿なんて皆目分からないから、カルパッチョにソーセージを追加しながらも、皆どこかで隊長を案じていた。

しかし当の本人は、イグルー内でカニしゃぶを楽しみつつビールを飲んでいたというから恐れ入る。

場所をエブリイワゴンの板の間レストランへ移し、我々も改めて乾杯。

本来イグルーで食べるはずだったホタルイカとモツァレラの昆布締めが、車内で絶品となった。 ヨメさんの十八番がまた一つ増えた模様。

山の仲間との会話は本当に面白い。
言わずもがな、ワインの瓶が次々と空いていく夜だった。

翌朝。
道の駅から望む上州武尊山は美しかった。

そして山中でも、隊長は無事に朝を迎えていた。
我々の築いたイグルーが雪原に並ぶ光景は、なんとも感慨深い。

なによりも仲間が無事に下山してくれたことが一番である。
次こそは、もう少し穏やかな天候の日に、改めてイグルー泊へ挑みたい。

無念ではあったが、楽しくも、多くを学んだ雪山山行だった。
いつものことながら、仲間に大感謝。
―――――
最高点の標高: 1988 m
最低点の標高: 1842 m
累積標高(上り): 154 m
累積標高(下り): -152 m
総所要時間: 05:33:12