大平散歩と太平山歩〈日の出家とあづま家編〉―鬼平犯科帳 風―

太平山おおひらさん 花より三つの名物』

春風が街をゆるやかに撫でる、四月初めの土曜のこと。
磯兵衛いそべえ――五十をいくつか越えた会社勤めの男――は、家族を連れ立って栃木の太平山へ向かった。

 

連れとは、いつも朗らかな妻・ケーコ。
足の不自由な母・春代。
そしてこの春、遠くハワイから一時帰国していた伯母・ミエコ。

 

四人乗りの車で向かったのは、桜が見ごろの謙信平。
そのすぐ前に構える茶屋“日の出家”の主が、かつて磯兵衛が旅先で助けた男の義弟だった縁で、店先の駐車場を気前よく空けてくれた。

「ありがたいわねぇ」
春代が目を細める。
その表情に、ケーコもほっと安堵の息をつく。

 

花は見事であった。
だが、それに劣らぬのが、太平山三大名物と呼ばれる「団子、焼き鳥、卵焼き」。

 

団子はもちもちと甘く、焼き鳥は炭の香りが食欲をそそる。
卵焼きは、口に含んだ瞬間にふんわりとほどける柔らかさ――。

「なによこれ、美味しすぎない?」
と、ケーコが笑う。
「うちでもやってみようかしら」と言ったが、それに伯母ミエコがひとこと。

「ムリムリ。これは山で食べるから格別なのよ、ケーコちゃん」

 

帰りには蔵の街に立ち寄って、春代が「懐かしいわぁ」と何度も繰り返す。
年寄りも若い者も、すっかりいい気分で帰途についたのであった。

そして、翌週――。

「運動しないと、俺ァどうも具合が悪い」

 

と、磯兵衛は呟いた。
天気は快晴。ならばと、今度はケーコと二人、電車に揺られて再び太平山へ向かった。

 

岩舟駅から歩き始めた稜線ルートは、前と同じ。
だが今回は、下山を少し先に延ばし、新大平下駅をゴールに設定する。

 

「たった10分歩くだけで、電車代が300円浮いて、帰宅時間も20分短縮……!」
磯兵衛は小さく拳を握った。
このささやかな達成感こそ、中年男の密かなよろこびである。

 

山道には、春の香が漂っていた。
道端には小さなスミレ。“ニオイタチツボスミレ”というらしい。
しゃがんで香りをかぐと、まるで高級な芳香剤のような、柔らかな甘さが鼻をくすぐった。

 

岩船山の高勝寺にも立ち寄り、天狗の面を見上げてふと笑う。
「鼻の穴、そこかい」

やがて現れるのが、今回の目当て“あづま家”。
初めて訪れる茶屋だ。

「いらっしゃいませぇ」

出迎えたのは、しっかりとした眼差しの女将。
縁側には若者たちがスマホ片手に団子を撮っている。
その横では、老夫婦が静かに卵焼きを分け合っていた。

 

「三つ、名物をくださいな。あと蕎麦も」

席についた磯兵衛が注文を済ませると、すぐに出てきたのは団子。
焦げ目が香ばしく、甘さがほどよい。
焼き鳥は少し濃いめのタレが、なんとも男心をくすぐる味。
卵焼きは……ああ、これは、母春代に食べさせたかった。

 

「ちょっと甘めだけど、出汁の効かせ方が見事……」

独りごちた声に、近くの席の婆さまが「でしょうねぇ」と相づちを打った。

食後の蕎麦は、さっぱりしていて実に良かった。
満腹と満足を抱えながら、磯兵衛はふと思う。

 

「全茶屋制覇したら、俺なりの“太平山グルメ番付”でも作るかな」

茶屋ごとの味の違い、香りの違い、雰囲気の違い――
たとえば、団子は“あづま家”。卵焼きは“日の出家”。
蕎麦はまた別の店に軍配を上げたくなる。

 

錦着山きんちゃくさんまでのルートも、次回は試してみよう。
帰りは栃木駅から――そんな計画を思い描きながら、磯兵衛は下山の道を歩き出した。

 

肩にふっと落ちたのは、舞い散る桜の花びら。
花より団子、ではあるが、花があってこその団子でもある。

春の山は、今日もよく食わせてくれた。

今回は池波正太郎氏の「鬼平犯科帳風」に書いてみた!
嘘です。この記事と同じ情報量の書き込んだ文章を、ChatGPT氏に校正編集してもらったらこうなった。あまりにも面白かったので、そのまんま記載した笑
でも‥苦労して書いたせっかくの文章を、AIにいいところを全部持っていかれた感じでショックは大!!笑


合計距離: 12.18 km
最高点の標高: 421 m
最低点の標高: 23 m
累積標高(上り): 908 m
累積標高(下り): -894 m
総所要時間: 05:56:58
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