土用の丑の日

鰻重
7月25日の本日は「土用の丑の日」。ウナギはうなぎれない。
と云うことで、ウナギつながりの「うん築ばなし」をお一つ。

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細長い敷地や建物の形状を表す言葉に「ウナギの寝床」があります。ウナギが住むような細長い家と言うことでしょうか。間口が狭くて奥行きが長い細長空間は、使い勝手が悪い印象があるので、出来れば避けたいと考える人が多いと思います。
では、何故そのような細長い形状の敷地が出現したのでしょうか?

かつて、家屋を新設する時には間口を基準に税負担を求める「間口税」というものがあったそうです。「間口が基準ということは、面積が同じならば間口を狭くして奥行きを長くした方が、税負担が少なくて済む」ということを考える知恵者が現れたことは想像に難くありません。
「ウナギの寝床」が税対策の結果として出来たとする所以ですが、誰かがやってみて、特にお咎めがなければ次から次へと現れてくるのは、今も昔も変わらないことのようです。

こうして一般化した「ウナギの寝床」を建築様式と捉えれば、代表格は京の町家と言うことが出来るでしょう。そこには建物の形態上の特徴のみならず、奥行きを生かす工夫が見て取れます。通り庭や吹抜けそして坪庭など、隣地側に余裕が無い敷地条件を克服して、採光と通風そして景観までも取り込もうという手法、今後の建築に積極的に取り入れられるべき要素だと思います。
また、間口が狭い分、通りに面してより多くの家や店が並んだことが、賑わいのある個性的な町並みをつくり出したことも事実なのです。意図されたことかは分かりませんが、建築計画とまちづくりの両面から参考になることが多いのが「京の町家」です。このような「ウナギの寝床」であれば、進んで受け入れたい人も多いのではないでしょうか。

ところで、「ウナギの寝床」と呼べる敷地や建物はどの程度の形状なのでしょうか?
間口:奥行きの比が1:3位だと、細長い「ウナギ」の感じはしませんし、比率が1:5程度でも間口が10mも20mもあるような敷地であれば「ウナギ」的ではありません。面積と比率の両方が満たされて、ウナギの寝床」は成立しそうです。
私見ですが、間口が2~3間(4~5m程度)、奥行き10間程度の面積30坪あたりが、語るに適切な規模のような気がします。
「ウナギの寝床」は、実際に東京でもよく見掛ける規模形状の敷地ですが、こちらは「京の町家」のようにはいきません。都市部の住居系地域にあって、建築基準法などの諸規制を受ける「ウナギの寝床」の中には、建物計画に四苦八苦する敷地も多いのです。
仮に、「ウナギの寝床」をお持ちなら、駐車場は望まない、部屋数は気にしないなど、幾つかの要望を諦めることで個性的で快適な住宅が実現可能であることを覚えておいて下さい。「住まい方」にはルールは無いのですから、細長いのなら細長いなりに、特徴を生かすことが大切だと考えています。
そして、「ウナギの寝床」を単なる細長い敷地で終わらせないために乗り越えなければならないことは山ほどありますが、都市の風景として定着させることが出来るとしたら、それは非常に意義深いことだと思うのです。

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