茂倉岳歩き with 茂倉避難小屋

ここのところ、山菜だの温泉♨だのお団子・焼き鳥・玉子焼きだので、まともに山を歩いていない。
「こんなことじゃあ、来月予定している北アルプス裏銀座で水を担いで歩くなんて、とてもじゃないができないぞ我々……」ということで、歩荷訓練と暑熱順化、そして順調に回復してきた膝の調子を確認しつつ、連休を堪能するべく静かな山域を歩いてきた話。

山ではあるが……海の日連休の、7月19日(日)〜7月20日(月)のことである。

 

スタートは、土樽の“茂倉新道登山口”駐車場から。
関越自動車道の土樽PAが目の前にあるのだが、この駐車場へ行くにはその先の湯沢ICで降り、ぐるっと回り込んでこなければ到達できない。

 

面倒ではあるが、無料で停められるのだからありがたい限りだ。トイレは無し。アカウシアブが多めで、猛禽類の姿もあった。

 

この日歩くコースは、茂倉新道を登り、茂倉岳、武能岳、蓬峠へと縦走し、蓬新道で下山する行程だ。
茂倉岳から蓬峠までの稜線は「谷川岳馬蹄形」の一部をなしており、美しいと噂に名高いその縦走路を辿りながら、『谷川馬蹄形を肌で感じる』ことができるルートである。

 

新潟の山仲間が先日このルートを歩いており、途中の避難小屋でのんびり過ごせそうだったため、ぜひ真似をして歩いてみたかったのだ。

 

さて、この日、関東甲信は梅雨明けが発表されたばかり。どうりで暑いわけだ。朝から強烈な熱気が漂う。酷暑、猛暑とはまさにこのことか。
登山口から30分、視界が開ける地点に辿り着くまでは、本当に蒸し風呂のようで息苦しく辛かった。

 

シーブリーズに北見ハッカとレモンユーカリを多めに配合した“自家製虫除け兼用気付けスプレー”を全身に吹きかけ、なんとか急場を凌ぎながら歩を進める。

 

曇り空ではあったが、開けた場所へ出ると青空が広がっていた。
ありがたいことにスッキリ爽快……と言いたいところだが、太陽の主張が激しい。とにかく暑い。実に焦げつきそうな暑さなのだ。

 

磯B、完全にバテバテのばてばてである。

 

暑さでヘロヘロになりながら、初日のちょうど中間地点となる「矢場ノ頭」で大休止とした。

 

ザックを下ろし、扇子であおぎ、爽快スプレーで涼を得て、喉越しのよいゼリー飲料でエネルギーと塩分をチャージする。
その甲斐あってか、なんとか息を吹き返すことができた。

 

私とは対照的に、ケロッとして元気なヨメさんがなんだか少し憎たらしい‥苦笑

 

この日の目的地は、とりあえずこの尾根の先にあるてっぺん付近だ。
しかしこのあたりからは、オアシスとなる避難小屋の屋根すらまだ目視できない。

 

山仲間からの事前情報によると「関越トンネルの換気塔」とのこと。
疲労のせいだろうか、私にはアレにしか見えなかった。お灸といえば、そう、「せんねん灸」である。

 

気を取り直して先へ進む。
歩きやすいように笹を刈り払ってくれていたことには深く感動した。本当に頭が下がる思いである。

 

ガスが出て日差しが遮られると、少しは足取りが軽くなり……とは残念ながらならなかった。
ひとまず、マイペースに軽快な足取りで飛ばしていくヨメさんの後を必死に追う。

 

すると程なくして、突如として目的地の山小屋が姿を現した。
この日お世話になる“茂倉避難小屋”である。和式トイレも2つ完備された、非常に綺麗な小屋であった。

 

小さな幾つもの窓から光が差し込む明るい室内は、外観以上に快適だった。
棚やテーブル、椅子といった家具のほか、ハンガーなどの備品まで充実していて驚かされた。

〝チップにご協力を〟とあったので、小屋の清掃や管理、そして先ほど歩いてきた登山道の整備へのお礼を込めて、協力金をステンレス製のポストへ入れておく。

 

我々は冬期の出入り口となる扉側のスペースに陣取り、風呂敷を広げて日没までの山時間をのんびりと楽しむことにした。

 

まずは飲料水の確保のため、小屋から少し下った水場へ向かい、冷たくて美味しい水を汲む。
この日は申し分ない水量であったが、時期によっては枯れることもあるそうだ。

 

水が確保できたら、いよいよ至福のひとときの始まりである。
山ごはんは、山仲間の十八番を真似てみた。
カマンベールチーズの周囲にプチトマト、マッシュルーム、ブロッコリーを散らし、たっぷりのオリーブオイルをかけて加熱する。それをパンとともにいただくのだ。
山で食す料理はどれも格別なのだが、これは特にお酒が進んでしまう危険な逸品であった👌

 

今回歩荷したお酒は、缶ビール6本とワイン1本。
……しかし、まったく足りなかった。ワインはもう1本欲しかったところだ。次回はさらに歩荷に励まねばなるまい。

 

扉を開け放ち、広がる景色を肴にしばらく盃を重ねていた。
一度座り込むと重い腰がまるで上がらず、目の前にそびえる茂倉岳の山頂を踏むのは、この日はあっさりスルーすることにした(笑)

 

翌朝。05:40に茂倉避難小屋を出発。
昨夜はソロの男性、若いカップル、そして我々の計5人という、実に静かな小屋泊であった。室温も高すぎず非常に快適だった。
我々は18時には疲労困憊で就寝してしまったため、小屋内にきっと響き渡っていたであろう私とヨメさんのイビキについては、恐ろしくて誰にも確認できなかった。

 

そして、茂倉岳に到着。
……やはり前日のうちに山頂を踏んでおくべきであった。
本来なら目の前にドカンと広がるはずの谷川岳の雄姿が、まったく見えない。
「まあ、涼しいから良しとしよう」と、心の中で軽く負け惜しみを呟いておく。

 

美しいと称される茂倉岳からの稜線歩きも――見事なまでにガッスガスであった。

 

足元のお花畑こそ綺麗に映えるものの、遠望は丸つぶれである。
ただその反面、ガスのおかげで直射日光が遮られ、涼しくて歩きやすかったのも事実だ。

 

視界に薄っすらと浮かび上がる稜線を追うと、ひときわ存在感のある武能岳がうっすらと見え隠れしていた。

 

「これはもしや……蓬峠の稜線までずっとガスのままなのだろうか――」
そう不安がよぎったが、笹平を過ぎてトンボの大群が発生し始めると、一転して頭上には鮮やかな青空が姿を現した!

 

やはり青空の下で歩く稜線は最高に気持ちが良い。
しかし、同時に一気に暑さが押し寄せる。夏山特有のこの複雑な心境は、なんとももどかしいものだ。

 

武能岳に到着。
そこから望む稜線の描くカーブが実に美しい。

 

サッサと通り過ぎてしまうのが勿体なく感じられる。
鋭く尖った山容を見せるのは、“上越のマッターホルン”と称される大源太山だ。

 

しばし、目の前の稜線美を眺めながら歩いてゆく。

 

蓬ヒュッテでは、見納めとなる稜線の絶景を目に焼き付けつつ小休止。

 

我々もいつかさらに特訓を重ね、歩きやすい季節を見計らって、念願の“谷川馬蹄形”を完全踏破しなければならない。この素晴らしい縦走路の先を、もっと確かめてみたいのだ。

 

ちなみに最近は熊対策として、ショルダーハーネスにボトルホルダーを取り付け、そこに“熊スプレー”を常備して歩くことが増えた。重量が増すのは玉に瑕だが、安心して歩ける装備が整うのだから致し方あるまい。
Nruc(ヌルク)の昔のボトルホルダーに、フロンティアーズマンMAXのベアスプレーがシンデレラフィットして気分が良い👌

 

蓬峠からの下山路は、ずり落ちそうな危険なトラバースがあったり、

 

生い茂る草木で足元が隠れていたりと気が抜けない。

 

滑りやすい渡渉ポイントも多く、最後まで緊張感を強いられるルートであった。

 

そして蓬新道入口(蓬峠登山口)から、車を回収する土樽の茂倉新道登山口までの林道が、まあ長いこと長いこと‥‥。
標高を下げるにつれて尋常ではない汗が吹き出し、襲いかかる猛暑に辟易しながらも、なんとか足を前に踏み出して歩き切った。

 

下山後、コンビニで買い求めたキンキンに冷えたノンアルコールビールが、五臓六腑に染み渡る。そんな熱~い夏の始まりの一日であった。

―― ― ― ―

合計距離: 15.39 km
最高点の標高: 1984 m
最低点の標高: 663 m
累積標高(上り): 1669 m
累積標高(下り): -1668 m
総所要時間: 04:44:22
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